ケアノート
看護ケア

与薬の6R――なぜダブルチェックだけでは足りないのか

連載:根拠でわかる看護技術(第5回)

誤薬は患者に重大な影響を及ぼすインシデント。6つのRを一つずつ確認する根拠と、ヒューマンエラーを前提にした安全管理の考え方を解説します。

与薬事故はなぜ繰り返されるのか

与薬は看護業務の中でも実施頻度が高く、そのぶんエラーの機会も多い行為です。誤薬は患者さんに直接的な健康被害を及ぼすため、確認のプロセスを標準化することが安全管理の要になります。その基本となるのが「6つのR」です。

6つのRとは

  1. Right Patient(正しい患者):フルネームと生年月日、リストバンドで確認する
  2. Right Drug(正しい薬剤):名称が似た薬剤の取り違えに注意する
  3. Right Dose(正しい用量):単位(mg/mL/mEqなど)まで確認する
  4. Right Route(正しい経路):内服・静注・皮下など投与経路を確認する
  5. Right Time(正しい時間):投与時刻や食前・食後の指示を守る
  6. Right Purpose(正しい目的):なぜこの薬を使うのかを理解する

これに「Right Documentation(正しい記録)」を加えて7Rとする考え方もあります。

「正しい患者」確認の落とし穴

病室やベッドの位置で患者さんを判断するのは危険です。ベッド移動や転室は日常的に起こるため、必ず本人に名乗ってもらうか、ネームバンドで照合します。意識障害がある場合はネームバンドやバーコード認証が確実です。

ダブルチェックの限界を知る

ダブルチェックは有効な手段ですが、二人で確認すれば安全という思い込みには注意が必要です。互いに「相手が見ているだろう」と気を抜くと、かえって見落としが増えることもあります。それぞれが独立して確認する、指差し呼称で意識を集中させるといった工夫で、形骸化を防ぎます。

ハイリスク薬に特に注意

インスリン、抗凝固薬、カリウム製剤、麻薬などは、少量の誤りでも重篤な結果を招くハイリスク薬です。これらは保管場所を分ける、投与時に追加確認を設けるなど、より厳重な管理が求められます。

エラーを「起こさせない」仕組み

人は必ず間違えるという前提に立ち、個人の注意力だけに頼らない仕組みづくりが大切です。バーコード認証システムの導入、紛らわしい薬剤の配置分離、指示の口頭伝達を避けることなどは、システムでエラーを防ぐ取り組みです。6Rは覚えるための語呂ではなく、一つずつ実際に確認することで初めて患者さんの安全を守ります。

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